役員給与の見直し~役員給与・賞与が経費として認められる方法
役員の給与は役員自身が決定するため、利益操作に利用されることが考えられます。
よって、役員給与にはいくつかの制限が設けられていますが、逆にこの制度を利用すれば大きな節税効果を得ることができます。
(1)定期同額給与
原則として、役員給与は毎月同額でなければ経費として認められません。
支給額の変更が認められる期間は期首から3ヶ月以内です。
役員給与の額は、いつでも自由に変更できるものではないので、
「当期の業績予測」と「適正な役員給与の設定」が、非常に重要となります。
(2)事前確定届出給与
平成18年度の税制改正により、役員賞与も経費として認められるようになりました。
しかし、これには条件があります。
「支給日」と「各役員の支給額」を事前に税務署に届け出なければなりません。
上記(1)の定期同額給与と同様に「当期の業績予測」と「適正な賞与の設定」が重要となります。
ただし、業績が悪化した場合などは、変更の届け出をすることにより、支給額の変更が認められます。
交際費と飲食費~「飲食費5,000円」ルールの活用
会社が支出した交際費のうち、その一部は経費として認められません。
しかし、「1人当たり5,000円以下の飲食費を交際費から除外する」という規定を利用すれば、その飲食費が全額経費として認められます。
この規定の適用を受けるためには、書類の保存が要件となっており、下記の事項を記載する必要があります。
①飲食のあった年月日
②飲食に参加した得意先、仕入先、従業員などの氏名
③飲食に参加した人数
④費用の金額、飲食店名、所在地
一次会だけでなく、二次会など複数に渡って行われる場合には、店舗ごとに書類を作成し、店舗ごとに金額の判定をします。
つまり、1店舗1人当たり5,000円を超えないように飲食すれば、全額が経費となる訳です。
ただし、お酒を飲みながらの単価計算は難しいかもしれませんが…。
【注意点】
- ・飲食店での飲食が対象となるので(弁当は可)、贈答品は認められません
- ・得意先などの参加がない社内飲食費は認められません
- ・ゴルフや旅行に際しての飲食は認められません
固定資産の購入と除却~資産ではなく経費として計上したい
(1)減価償却資産の購入
備品や車両などの減価償却資産は月割りで償却をしますので、購入の時期によって、経費として計上できる額が違ってきます。
例えば、200万円の乗用車を購入したとします。
期首に購入した場合は…2,000,000円÷6年×12/12月=333,333円
期末に購入した場合は…2,000,000円÷6年×1/12月=27,777円
期首に購入する方が、期末に購入するよりも30万円超も多く経費を計上することができます。
上記の「役員給与の見直し」でも触れましたが、将来の業績予測と事業計画が重要となってきます。
減価償却資産は、年度の早い時期に購入することが鉄則です。
(2)少額の減価償却資産
下記の減価償却資産には特例がありますので、期末の取得であっても、資金に余裕がある場合には節税対策として効果的です。
①10万円未満のもの…全額経費
②20万円未満のもの…3年間で3分の1ずつ償却
③中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)が取得した30万円未満の減価償却資産…全額経費
(3)固定資産の除却
固定資産の除却は、現金の入出金を伴わないため、忘れてしまいがちです。
固定資産を多く所有してる製造業者などは、棚卸しと同じ要領で、実地の状況と、減価償却資産明細書の内容を照らし合わせることをお勧めします。過年度の除却もれが結構あるものです。
また、法人税における償却資産の管理と、固定資産税における償却資産の管理は繋がっていますので、除却の処理をしないと、無駄な固定資産税を納付することになってしまいます。
ちなみに、固定資産税の税率は1.4%ですので「帳簿価額×1.4%」が無駄な税金という計算になります。
(4)中古の資産の購入
中古の固定資産と新品の固定資産とでは、耐用年数が異なります。
①法定耐用年数の全部が経過しているもの
法定耐用年数×0.2
②法定耐用年数の一部が経過しているもの
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
例えば、200万円の乗用車を購入したとします。
A.新品の場合は…2,000,000円÷6年=333,333円
B.6年経過している場合は…2,000,000円÷2年(※1)=1,000,000円
C.3年経過している場合は…2,000,000円÷3年(※2)=666,666円
※1 6年×0.2=1.2年→2年(2年に満たない場合は2年)
※2 (6年-3年)+3年×0.2=3.6年→3年(切捨て)
AとBでは60万円超、AとCでは30万円超、経費として計上できる額に差がでます。
新車を我慢して中古車を購入すれば、支払う税金の額は小さくなります。
(5)固定資産の付随費用
固定資産を購入したときにかかる諸経費は、原則的として取得価額に算入しなければなりません。
しかし、下記の支出は経費として計上することができます。
①不動産取得税、自動車取得税
②登録免許税など登記に関する費用
③建物の落成式費用、記念品費用など
固定資産の取得価額には、色々な名目のものが含まれていますので、請求書などで支払額の内訳を確認する習慣をつけましょう。
経費として計上できるものがあるかもしれません。
社宅の貸付け~相場よりも安い家賃で従業員のモチベーションをアップ
会社が借り上げなどをした物件を従業員に寮として貸し付けた場合、従業員から一定額の家賃を受け取っていれば、従業員に給与として課税されることはありません。
具体的には、下記の「賃貸料相当額」の50%以上を受け取っていればOKです。
もちろん、支払家賃は会社の経費として計上できます。
【賃貸料相当額=①+②+③】
①建物の固定資産税課税標準額×0.2%
②12円×家屋の床面積÷3.3m²
③敷地の固定資産税課税標準額×0.22%
例えば、家賃10万円、固定資産税の課税標準額を基に計算した「賃貸料相当額」を2万円とします。
→従業員は「2万円×50%=1万円」の家賃を支払えば給与として課税されず、家賃10万円のマンションに1万円の負担で住むことができます。
ただし、従業員が無償で借りる場合には、2万円が給与として課税されます。
【注意点】
また、固定資産の所有者でなくても、賃借をしている者であれば、各市区町村で固定資産の課税台帳を閲覧できますので、賃貸物件であっても「固定資産税課税標準額」を調査することは可能です。
社宅の貸付は、業績が比較的安定している会社にお勧めの節税対策です。会社は家賃を経費として計上することができ、また、相場よりも安い家賃で従業員に社宅を提供することにより、従業員のモチベーションのアップが期待されます。
貸倒損失の計上時期~回収不能の債権を確実に貸倒処理する
金銭債権について、次のような事実が生じた場合には、貸倒損失として処理します。
(1)法律上の貸倒れ
①会社更生法などの規定による切捨て
②債権者集会の協議決定などによる切捨て
③債務超過が長い期間続き、弁済を受けることができない場合の書面による債務免除
(2)事実上の貸倒れ
債務者の支払能力などから全額が回収不能となった場合には、回収不能が明らかになった事業年度に貸倒損失として処理することができる。ただし、担保物がある場合には処分後でなければなりません。
(3)形式上の貸倒れ(売掛債権のみ、貸付金は対象外)
①最後の取引のときから1年以上を経過した場合に、備忘価額(1円以上)を控除した残額を貸倒損失として処理することができる。
②同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が、取立費用(旅費など)よりも少なく、催促しても弁済がない場合に、備忘価額(1円以上)を控除した残額を貸倒損失として処理することができる。
貸倒損失は、いつでも自由に計上できるものではなく、上記のような事実が生じた事業年度にしか経費として計上することができません。しかも、(1)③などは、当社側がアクションを起こさなければ貸倒れとして処理されません。
債権の管理はもちろん重要ですが、回収が滞った債権については、さらに厳重に管理し、貸倒れの要件を満たすかどうかを常に確認できるようにしておきましょう。
債権の貸倒れは会社にとって大きな損失ですが、貸倒れの要件を満たした債権を確実に貸倒損失として計上し、これに伴う納税額を少なくすることが、健全な会計処理です。